キャリア教育とは?概要や必要とされるようになった背景について解説!

  • 公開日:2023.11.01

    更新日:2023.11.01

    キャリア教育とは、自立して生きる能力や術を身につけ、個人の経歴である「キャリア」の形成を促す教育方法です。キャリア教育では、単純に仕事や労働について学ぶだけではなく、自分の望む生き方を実現するために必要な能力や態度についても学びます。

    この記事では、キャリア教育の概要や職業教育・進路指導との違い、ビジネスシーンでキャリア教育が求められる背景などについて解説するので、参考にしてください。

キャリア教育とは?

キャリア発達は、社会において自分の役割を果たしつつ、自分らしい生き方を実現していく過程を指す言葉です。
日本の教育を取りまとめる中央教育審議会では、キャリア教育について「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義しています。

また、自らの力で生き方を選択するだけではなく、選択した生き方を実現するために必要な能力や適切な態度を身につけさせるのも、キャリア教育の役割です。

※参考:第1節キャリア教育の必要性と意義(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/06/16/1306818_04.pdf

キャリア教育におけるキャリアの概要

キャリアという言葉はさまざまな意味合いで使われる言葉です。就職や出世、現在担当している業務のポジションなどをイメージするのが一般的でしょう。

他にも、厚生労働省が発表したキャリア形成を支援する労働市場政策研究会では、キャリアについて、時間的持続性または継続性を持った概念であると定義しています。そして、キャリア教育におけるキャリアとは、過去の職務経験や、それに伴う計画的な能力開発のことを指しており、過去の役職や経験とはまた違った意味合いを持っています。

このことから、 キャリア教育におけるキャリアとは、就職や出世など何かしらに取り組んで得られた結果ではなく、結果に至るまでの継続的な過程を指す言葉です。

※参考:「キャリア形成の現状と支援政策の展開」-個人の能力・個性がいきいきと発揮される社会を目指して-(https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/07/h0731-3a.html

職業教育・進路指導との違い

キャリアと似た概念はいくつかあります。下記では、キャリアと混同されがちな職業教育と進路指導との違いについて解説するので、参考にしてみてください。

  • ・職業教育は、特定の職業で活用できる能力を鍛える専門的な教育
  • ・進路指導は、中学校と高等学校に限定された、将来どう生きたいかという長期的な視点での教育

職業教育

中央教育審議会答申が発表した、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」では、職業教育を「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」と定義しています。

キャリア教育は、自分らしい生き方や望む働き方を実現することを目標として、そのために必要な考え方や態度を身につける教育です。

職業教育は、特定の職業で活用できる能力を鍛える専門的な教育なのに対して、キャリア教育はどの職業でも活用できる汎用性の高い能力を育成するというのが相違点です。

※参考:「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2011/02/01/1301878_1_1.pdf

進路指導

進路指導も、キャリア教育と似た概念として挙げられる概念です。中央教育審議会では、進路指導について、「将来どう生きたいかという長期的な視点で、人間形成を目指す教育活動」と定義しています。

進路指導は、学習指導要領の上では中学校と高等学校に限定された教育活動です。一方、キャリア教育は幼児期の教育から高等教育に至るまで継続的に行われます。実施される期間は異なるものの、理念や概念など自体は進路指導もキャリア教育も同じです。

※参考:「第2節キャリア教育と進路指導」(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/06/16/1306818_06.pdf

キャリア教育が求められる背景

ビジネスシーンにおいてキャリア教育が求められるようになったのは、社会や企業を取り巻く状態の変化にあります。具体的な要因として挙げられるのは以下の通りです。

  • ・企業が教育に時間を割く余裕がない
  • ・将来や職業について考える機会を得るため
  • ・学業のモチベーションを上げるため
  • ・社会環境の変化への適応

企業が教育に時間を割く余裕がない

キャリア教育が求められる背景として、企業が従業員の教育に時間を割けないことが挙げられます。昨今は、人手不足や労働時間の長期化などにより企業の体力が低下しており、新人や若者を採用しても社会人として基礎から教育を施す余裕がないからです。

そのため、企業に入って働き始めるより前に、社会人として活躍するために必要な知識や経験を身につけているのが強く望まれるようになってきました。そのため、社会に出るまでに基礎的な能力を身につけるキャリア教育が活用されています。

将来や職業について考える機会を得るため

将来や職業について考える機会を得るためにも、キャリア教育は必要です。昔に比べて大学への進学率が上がっており、将来や就職、働き方などについて考えることが先延ばしされるようになってきました。

そのため、 早い段階から自分の生き方や働き方など将来について考えてもらい、将来の目的やイメージに合わせた勉強・機会の獲得ができるよう、キャリア教育の導入が進められています。

学業のモチベーションを上げるため

キャリア教育が求められている背景には、学業のモチベーションアップを促進することも挙げられます。

キャリア教育によって将来の生き方や働き方について具体的なビジョンが見えるようになれば、何を目的に勉強をするのかがわかりやすくなり、モチベーションを保ったり、より精力的に取り組んだりすることができます。

社会環境の変化への適応

社会環境の変化に適応するためにも、キャリア教育が求められています。昨今の社会環境は目まぐるしく変化しており、今後も予測が難しい時代が続くとされています。

具体的には、雇用システムの変化、求職希望者と求人希望との不適合の拡大、新規学卒者に対する求人状況の変化などが、社会環境を複雑にしている要因です。キャリア教育は、社会の変化にも適応できるような人材を育て、国内に限らず世界でも通用する力を備えるのにも役立ちます。

キャリア教育で育成すべき基礎的・汎用的能力

キャリア教育においては、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力を「基礎的・汎用的能力」と呼んでいます。 基礎的・汎用的能力を構成しているのは、下記の4つの能力です。

  • ・人間関係形成・社会形成能力
  • ・自己理解・自己管理能力
  • ・課題対応能力
  • ・キャリアプランニング能力

ここからは、それぞれの能力について詳しく解説します。

人間関係形成・社会形成能力

人間関係形成・社会形成能力とは、多様な立場への理解や、相手の考えを聞いて自分の考えを伝えるとともに、自分の置かれている状況を受け止め、役割を果たしつつ他者と協力して社会に参画する力です。

人間関係形成・社会形成能力があることによって、他者の個性を理解したコミュニケーションが取れるようになります。ビジネスシーンにおいては、円滑なチーム形成ができるようになるでしょう。社会との関わりのなかで生活や仕事をしていくうえで基礎となる能力です。

自己理解・自己管理能力

自己理解・自己管理能力も、基礎的・汎用的能力を構成する要素です。具体的な内容として、自己の役割や立場への理解、物事を前向きに考える力、自己の動機づけなどが挙げられます。

子どもや若者の自己肯定感が低い傾向にある中、やればできると考えて行動できる力は、成長を促したりモチベーションを高めたりするためにも重要です。また、キャリア形成や社会で活躍するためだけではなく、自分という人間を形成するための基盤となる能力です。

課題対応能力

課題対応能力とはその名前の通り、仕事をする上でのさまざまな課題を発見・分析し、適切な計画を立てて解決できる力です。

従来の考え方や方法にとらわれずに物事を進めるのにも、課題対応能力は必要とされており、変化の激しい現代社会の情勢やグローバル化の対応などにも欠かせません。

さらに、自らの役割や行うべきことに意欲的かつ自主的に取り組む意識を育むのにも、重要ですな役割を担っています。

キャリアプランニング能力

キャリアプランニング能力とは、基礎的・汎用的能力を構成する要素の1つです。 学ぶことや働くことの意義、役割の理解、多様性の理解、将来設計のための行動や思考を促し、自ら主体的にキャリアを形成していくために、キャリアプランニング能力が用いられます。

そして、キャリアプランニング能力は一時的に必要となる物ではなく、社会人・職業人として生活していくのに生涯に渡って必要となる能力です。

まとめ

キャリア教育の概要や職業教育・進路指導との違い、キャリア教育が求められる背景や育成すべき能力などについて解説してきました。

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